生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

踊りのように美しくはない

 

 8月16日水曜日。

 夜中、自分のいびきがあまりにもうるさくて起きた。正確には、そのとき思わず発した「うるさ」という自分の声で、だが。

 6時45分、ほしのスマートフォンから折坂悠太の『光』。「このゲ」でほしが止める。自分のいびきも折坂悠太の歌声だったらいいのにねぇ、と思った。さっさと起き上がり支度を始めるほしを横目に自分は少し二度寝した。

 ご飯、わかめと春雨のスープ、サラダ、昨日の麻婆茄子の残り、山形のだし、ほしの実家からお中元でもらったねぶた漬け。NHKの朝のニュースを見ながら朝食を済ませる。8月から異動になったほしは忙しそうにしている。

 資源ごみの日。溜まっていた古紙を捨てることができてさっぱりした。スチーム焼き鳥の空き箱。アパートの裏で袋栽培しているトマトに水をやる。黄色の実は明かりのついた豆電球のように見える。ごみ捨て場のそばで上手に育てられていたミニトマトは収穫を終えたのかすでに跡形もない。

 8時50分頃家を出る。畑へ。パプリカがついに赤く色づき始めた。スーパーで売っているような肉厚な実ではないものの、どんなに不格好であれ自分が育てたものにはやはり愛着が湧くものだな、と思えて安心した。もしかしたら自分にも何かを大切にできる心があるんじゃないか。それだけで畑をやって良かったと思う、自分にとって豊かさは心のことだから。

 勤めへ。途中、観光通りで車に轢かれた猫がバックミラーに映った。すごい速さで身体を捩らせていた。普通に生きていてあんなふうに身体が動くことはない、と思った。命を乞うための動きであると同時にそれは命が今まさに失われていることを示しているように見えた。踊りのように美しくはなかった。

 と、あの猫の最後の姿に意味を見出し物語に仕立てようとしている自分が気持ち悪く、その後はひたすら安全に気を配って運転をした。

 9時40分始業。5日ぶりの勤めは大きな問題もなく。出勤している人の数が少ないから夏期講習の校舎、みたいな雰囲気があってちょっとよかった。高校3年生の自分には受験勉強をする必要がなかったけども。講習には参加したけれどずっと机の下で寺山修司の『家出のすすめ』角川文庫の、を読んでは線を引いていたと思う。たしかあの夏休みに、図書室に入荷した新刊の『火花』を平野明が勝手に持ち出して教師に追いかけ回されていたんじゃなかったっけか。

 なんとなく体調優れず。19時10分頃退勤。東青森のユニバースで割引のシールの付いた肉じゃが、メンチカツをかごに入れる。一度は塩唐揚げを手に取ったのだが、今日はからやまで昼飯を食べた、というほしからのLINEを思い出して戻した。

 20時頃帰宅。熱を測ってみたが36.6度。とりあえず栄養をば、と水菜、キャベツ、きゅうり、トマト、茹でたささみのサラダ、かぼちゃのサラダ、枝豆たべる。シャワーを浴びたら髪の毛がたくさん抜けて、これを束ねたらドラッグストアにある白髪染めの色見本ができそうだった。新しい円形脱毛が今まさに誕生している。

 22時頃ほしが帰ってくる。出来合いの品を皿に盛って出す。「いい経験をした」と公用車を立体駐車場で擦った話。帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。