生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

探せ!

 

 6月5日水曜日。

 母親は私に対して一切干渉しないという形で協力していたのだと思う。褒められないこと以上に貶されないことのほうが自分にとってはよっぽどよかった。しかし貶されずにやってきたからこそ軽い切り傷で敏感に痛む。けれども「これ見よがしの繊細さ/その面の皮の厚さ」だから。八方を塞がれたら九方目を探せ!

運動会

 

 5月25日土曜日。晴れ。

 7時頃起床。シャワー浴びてから朝食。納豆卵かけご飯、梅干し。居間にだけ掃除機かける。流しに溜まった洗い物を片付け、コンロ周りの油汚れを拭く。

 9時半過ぎ自転車で出る。日差しはあるものの案外冷える。小学校の運動会へ。マカロニえんぴつの曲がアレンジされたやつが校庭に流れていた。窓には「あか 188」「しろ 184」と掲示してあり接戦の様子。1年生の玉入れを眺めながら、いよいよ自分も、自分のではない子の運動会を見に行くような人間になってしまったかと思うと感慨深い。なりたかった大人に、なれている気がしないでもない。

 赤組のベンチの後ろでかおりさんと落ち合う。パン屋で働いていた時に仲良くなった。「STAR WARS」と胸に書かれたTシャツを着たあだちさん(旦那)現れる。「徒競走1位だった」と自慢する両親。ビデオ撮影したゆらちゃんの走りを見せてもらう。すごい速さで、最後流していた。別にクラブに通ってるわけでなく「鬼ごっこで鍛えた脚力」とのことでかっこいい。

 5、6年生の綱引き。自分は綱引きけっこう好きなので、「ちくしょうばかたれ、もっと上体倒せ!」とか野次を飛ばす。自分の頃は騎馬戦だった。あの、暴力が許されて称賛すら浴びている感じがとても好きだった。小学生の頃まではまともだった。

 6年生が小学校生活の集大成を表現する、宇崎竜童による名曲『ダンスNE・BU・TA』に心沸き立つ。かおりさんといっしょに踊って楽しい。自分はこれを真剣に踊ることをかっこいいと思っていたが、ゆらちゃんは見ているだけで恥ずかしいという。まあ、井森美幸みたいな動きはTikTokじゃ流行らないだろうし。

 いよいよ3年生のリレー。「予行練習も見て確認したから」と、ゆらちゃんの走りがよく見えるという位置へ駆けるかおりさんとあだちさんの後を追いながら、かっこいい親だな、と思う。始まってみるとまったく反対の位置だった。視力だけが取り柄でよかった。3年生は今年初めて棒のバトンを使うようになった(低学年の頃は、輪っかのバトンだった)ので慣れておらず、バトンをもらう方の腕がとんでもなく高い位置にあり、みな永野のような姿勢だった。ゆらちゃんの所属する赤組は、途中バトンを落としたりもしたがただひたすらに足が速いので勝った。かっこいい。

 「来ましたよ……」とほしが現れてちょうど全競技が終わる。結果は20点ほどの差で白組が優勝、赤組は準優勝だった。こういうのは結果じゃねんだいな、と小学生で悟るのはなかなか難しいけれども。

 はしごに登って国旗を下ろすあの用務員のおじさんはバンドマンだという。今時の運動会はお弁当を挟むことなく12時前解散。自転車でニュー北京へ。五目ラーメンおいしい。ほしの注文したバラ焼き定食もうまかった。 のれんがやたらでかい。

 畑へ。水撒く。風除けの袋のために差していた支柱を抜いた。パプリカに白い花がついたが、このまま実を成らせると全体が成長しないので切らないといけないらしい。これを人間に置き換えると……と思いかけてやめる。

 C&Yへ。ケーキ屋。ゆらちゃんに労いのお菓子を見繕う。いちごのドーナツ、レモンのドーナツ買う。そのまますぐそばのマエダストアへ。ほしがあだちさんのためにめざし買う。

 13時頃帰宅。本読んでたらそのまま15時頃まで眠ってしまう。18時頃に配達してもらう予定の柴田聡子のレコード。ほしが配達業者に宛てて手紙を書き、玄関に貼る。

 16時半頃自転車で出る。新しい駅ビルの連絡通路であだち一家と落ち合う。長島の焼き鳥屋はまちゃんに行くことに決め、ベスコン(ベスト・コンディション)でビールを飲む番組みたいになりながら歩く。酒のヨシダ(吉田屋というとややこしくなる)で角打ちできるらしく通りがけにみんなで覗き込む。

 はまちゃん初めて。飲み物を自分で注いでよく、初めてビールサーバーを触ってうれしい。「早い、まだ傾けて」とか「はい、泡」とかあだちさんの指導が入る。ゆらちゃんはカルピス。テレビで大相撲を見ながら飲めるのでよかった。琴櫻と阿炎の一戦で「あー」とか大きな声出す。晩酌セットのめかぶ、冷奴、焼き鳥盛り合わせ。焼きそば、つくね、卵焼き。どれもおいしかったがとくに焼きそば。スマホのアプリを使ってゆらちゃん、かおりさんと視力検査をして楽しい。自分とほしは視力がいいのでこんな甘っちょろい検査では物足りなく、民族用とかのアプリを開発してもらいたい。カシス作ってる林さん。

 混んできたので次の店を探しに出る。「青森で一番高い寿司屋だ」と天ふじの前を通り過ぎる。小学校から高校まで同じだった友人が大学時代にここでバイトしていたそうだが、「賄いの寿司を食べたら今まで食べてきた寿司が寿司ではなかったことに気づかされた」と言っていた。そして客のほとんどは医者だった、と。

 沖縄料理屋のニーニーを目指して歩くもやっておらず。「ま、今日は運動会だから!」と潔く諦めてふたたび歩く。住宅街を大きな声で話しながら歩いてゆらちゃんからお叱りを受けた。長島小学校の立派な遊具。あけぼの寿司だかなんだか。巨大な「竹駒」の文字が付されたアパートに一同興奮する。古川まで出、源ちゃんラーメン覗くも5人で押しかけると源ちゃんの腕がふたたび故障しかねるので友楽へ。ここも満席。ハイボール、レバニラ炒め、唐揚げ、餃子。とてもおいしい。何を話したかまったく覚えていないけど。

 21時半過ぎ、友楽の前で手を振って別れる。楽しかった。月が「竹駒」の文字くらい大きい。帰宅し、無事置き配してもらったレコードを持って歩いて出る。月を見るため中央大橋を登るも見えず。手すりによじ登ったらよく見えた。「NABE」のオブジェがある窓辺。帰宅し、シャワー浴びずに布団に入る。喧嘩してから就寝。

どうして夜明けを見ないのか?

 

 5月23日木曜日。晴れ。

 この頃は勤めから帰ってくると用意してもらった飯を食べて部屋の床で眠るだけの日が続いており、この気分が一過性のものだとわかっていてもつらかった。慎ましくあろうとすることのおこがましさ。

 昨日は特に気分がつらく、しかし結婚式の招待状の返信をしなければならなかったので、財布とはがきと小林秀雄の『読書について』を入れた巾着を手にして夜ひとりで散歩に出た。道端にポストは無くコンドームの自販機が点灯していた。結局はローソンまで大人しく歩いた。グリーンラベル買って飲みながら帰る。月を背にすると勿体無いような気がして、都度振り返りながら歩いた。

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 今日の勤め終わり、空中で羽ばたき停止している雀をしばらく見つめてしまった。苛立って仕方がない。一度野良に憧れた者が本物の野良にはなることはない。詩人に肖像は要らない。私も凡人だけどもしかし時々は勘違いしてないとやってられないので。車は便利だから嫌いだ。彼は私に眠り過ぎだと言うが、今の私は目覚めているときの方が目覚めているようでよほど眠っている。どうして夜明けを見ないのか?

ここで自信を買ったんで

 

 5月18日土曜日。晴れ。

 6時過ぎ目が覚める。布団の中で昨日書いた日記を読み返す。アラームが鳴り6時半起床。ほしが見た夢の話。「音楽の本を書いた、1冊2,180円の」と。自分はこのところ風呂に入らずに寝てしまう日が続き昨日もそれ。シャワー浴びる。7時半頃朝食。 消費期限が5日過ぎた牛乳をほしが流しに捨てる。冷凍していたくるみのフランスパン、卵、香勲、サラダ。八戸の6かくコーヒーの豆でいれたコーヒーおいしい。朝ドラ『虎に翼』のダイジェスト版。花岡に対して「この人何にも正しいこと言ってないじゃん」と怒るほし。洗ったシーツを干す。8時半、勤めに出るほしを見送る。ベンさんの手伝い。

 そのまま玄関前の掃き掃除。共用部分の階段まで。自分の無能さに耐えて得た金で飯を食うのはつらいことだぜ、と思いながら。

 支柱と軍手と麻紐とハサミ持って畑へ。根本さんはおらず。袋をかけていたパプリカ、ナス、トマトは昨日の暴風雨に晒されても平気だった。三浦さんに献上するための枝豆にも支柱立てる。黄色くなった葉や出始めの花を切るなど。水撒いて気持ちいい。思想なき畑がいったいどんな糧を生むというのか。

 10時過ぎ帰宅。家事とか全然やりたくないので本読む。でも床がざらざらしているのは嫌なので掃除機をかけて水拭きした。12時、椅子の上に膝を山折りにして座りAmazonプライム想田和弘監督『精神』見ながらカップうどん食べる。

 自覚できる程度の悪ならば自分の中から取り除きたい。自分は悪人だと自覚したままで生きていたくない。人格者なんてどうせなれやしないんだからせめて志すくらいはしときたい。「自分を表現する」ということがいかに退屈な行為であるか。

 14時頃車で出る。古川のわやわやの向かいにあるコインパーキングに車を停める。古本市で使用した什器を抱えて古書らせん堂へ。三浦さんに会えてうれしい。倉庫の鍵を開けてくれ、借りていた什器を返す。買取の依頼が続いており疲れている様子。倉庫の戸を開けたまま話していると、通りすがりの女性にも「本を買い取っていただけないでしょうか、10円にでも20円にでもなれば」と声をかけられていたが丁重に断っていた。店頭に出すことができずに倉庫にしまってある本でもうひとつ店を構えられそうなほど棚がおもしろい。「はなかり書店やらないか」と冗談で三浦さんが言うので「いつでも連絡待ってますよ……」とまんざらでもない感じを出しとく。「本を触っていられたらこれ以上幸せなことはないんだけどね」と三浦さん。かっこいい。外の均一で創元社の『名詩名訳』を見せてもらう。岩波書店版『星の王子さま』の翻訳は内藤濯(あろう)。『立原道造詩集』、『くるい きちがい考 / なだいなだ』、『笑い地獄 / 後藤明生』『高橋睦郎詩集』買う。帰り際、らむねくりの山田さんから三浦さんに連絡あり。三浦さんが「みんながんばってらな」と感心していた。手を振って別れる。

 そのまま歩いてSMOGへ。わたるさんに会えてうれしい。自分だと気がついてもらえなかったので「ねりねりです」と申告すると「ねりか」と言われた。ウェルカムお菓子(この店にはそういうのがある)は甘くないチョコレート。わたるさんはこのところ風の噂に苦しめられている様子だった。こんど結婚式に出るので服を見繕ってもらう。居合わせたお姉さんもいっしょに選んでくれてうれしい。ヘンリックのスカーフを巻いてもらったり、ネックレスを試したりしてたのしかった。きれいな服やそれを着ている人を見るのは好きだが自分が着たいとは思わず生きてきたので。でもここへ来ると服を着ることが楽しいと思える。黒のワンピースと靴買う。わたるさん曰く「太田くんみたいな」お菓子もらった。店の外に出てたばこを吸うわたるさんに「ねりはもっと自信持った方がいいよ」と言われる。「ここで自信を買ったんで、もう大丈夫ですよ……」と渋い顔して別れる。少し歩いたところで振り返り手を振る。

 17時頃帰宅。さっき買ったワンピースと靴をほしに見せびらかして満足。勤め先の人とテニスしに行くほしを見送る。冷蔵庫にかろうじて残っていたキャベツ、玉ねぎ、長ねぎを炒めたら乾いた回鍋肉みたいなのが出来上がった。19時過ぎほしが帰ってきて夜飯。乾いた回鍋肉みたいなの、かぶと小松菜とひき肉のあんかけみたいなのの残り、まぐろの刺身、サラダ。金麦と本搾り。酔っ払いながらもシャワー浴びて0時過ぎ就寝。

 

心で花を狩る

 

 5月11日土曜日。あらかじめラグノオの菓子折りで天気の機嫌を伺っていたので晴れ。

 6時半頃起床。後頭部に五〇〇円玉ほどの円形脱毛を発見する。まー、棟方志功円形脱毛あったしな、と思う。私の後頭部には無が「存在する(ザイン)」。朝食は納豆卵かけご飯、サラダ、味噌汁。先月のつがる工藝店の販売会で手に入れた益子焼の茶碗。

 車に荷物を積み込み8時過ぎ出る。かさぶた文庫の前を過ぎ、昭和通りを抜けて新町通り、安方へ。途中かれんちゃん、ボヘとすれ違う。8時50分頃ねぶたの家ワ・ラッセへ。搬入口にはすでに出店者の方々が集まっていた。

 9時、業務用のエレベーターを使用して搬入作業と設営を始める。前日のうちに会場設営ができなかったため、ここぞとばかりに主宰の立場を乱用し出店者の皆さんをこき使う。自分も一丁前に汗を垂らしてはいたものの、エレベーターでひとりになったときにこいた屁がなかなか臭かったくらいで何もしていない。

 10時、でかい声とか全然出したくないがでかい声を出すのが主宰らしいのででかい声を出して開場。70代くらいの男性がやって来て「古本売ってるって聞いたんですが」。その男性を皮切りに第2回本の市「はなかり市」始まる。

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(写真提供:風見鶏Books)

 開場から間もなくして古書らせん堂の三浦さんが来てくれた。気にかけてくださってありがたい。「これは、売るな」と現代詩文庫の『尾形亀之助詩集』を無理やり引っ込められる。もっと本を「のっけ」るよう助言していただく。

 NPO法人サンネット青森の根本さんも来てくれた。『海に落とした名前 / 多和田葉子』買ってくれた。次回はケアにまつわる本を揃えたい。ちかこさんとも話せてうれしい。3月に行われた「べてるの家」の当事者研究のとき以来。

 中学からの友人・阿弥の母親ゆりさん。真剣に本を選んでいる写真を、というので「じゃあこの本いいですよ」と『太宰治 滑稽小説集』(みすず書房)をすすめる。神妙な面持ちでゆりさんが『太宰治 滑稽小説集』を手にとる写真が撮れてうれしい。庭のスズランを瓶に生けたのもらった。

 ほしさんの両親も来てくれる。ほしの選書をほしのお母さんが買っていった。お土産にメキシカンのホットサンドもらう。いちごジャム付き。

 やまびこさんきてくれてうれしい。「ケストナーの『飛ぶ教室』はどうだった?」。今もパン屋で働き続けていたら、マチアスのような勇敢な少年にパンを売ってやれたかもしれない、と思う。現代詩文庫の『田村隆一詩集』を買ってもらった。「黒田三郎は、多分もう持っていると思うから」。

 陸奥新報での連載『図書館ウォーカー』を日外アソシエーツから出版したオラシオさんが立ち寄ってくれ、haruka nakamuraも昔こんな感じだったらしい(伝聞)絡み方を披露してもらう。この後新幹線に乗ってどこかの街の図書館へ出かけて行った。

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 こうせいさんにも初めて会えてうれしい。今後のノイズ・ミュージックを牽引していくであろう息子たち。こうせいさんとほしは互いにドッペルゲンガーというわけではなかった。

 「はなかり市」ではあいにく棒パンは扱ってないので熊谷暁人氏のあの名曲を会場で流すことはできなかったものの、もぐらの一家が来てくれてうれしい。『おしりたんてい』の次なる本は見つかっただろうか。焼き菓子を差し入れてもらった。またあとで、と言って別れる。

 八戸ブックセンターの熊澤さん。1回目の「はなかり市」に続いて来てくれてうれしい。熊澤さんの人柄からなる振る舞いにはいつも感じ入る。ZINEのワークショップの成果発表会と販売会が来週18日に八戸ブックセンターで行われるそうでチラシもらう。きれいな包みのチョコレートを差し入れてもらった。

 先ほど差し入れてもらったお菓子を「おやつタ〜イム」と踊りながら出店者の皆さんに配り歩いていると肩からカメラを提げた人に声をかけられる。ぬまりさん。昨年4月、五所川原市のギャラリーカフェふゆめ堂で開催された個展「得体」で一度お会いしたことがあるのみだが、とても気さくな方で心地よい。今回東京から出店してくださったノルドベースさんと親交があるとのこと。ZINEの神、ジンジン。

 ゆりさんの娘こと阿弥も綾野剛似の恋人と来てくれてうれしい。厚みが3.8センチメートルある(定規で測った)『メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか / 明川哲也』(晶文社)を立ち読みし、主題を掴んだので買わずに帰る「アナログ万引き」をされた。

 弘前からは鷹彦さんも駆けつけて来てくれてうれしい。1回目の「はなかり市」以来。これから古書らせん堂、国際芸術センター青森を見てきます、と。いつか鷹彦さんのお眼鏡にかなう本も置けたらいい。それが自分の作ったものであるならもっといい。

 『十八歳、海へ/ 中上健次』、『まれびとの座 折口信夫と私 / 池田弥三郎』、『大手拓次詩集』、『フランス詩集』、『鮎川信夫詩集』、『吉岡実詩集』、『渋沢孝輔詩集』、『木原孝一詩集』という、まるで自分みたいな本の買い方をする人に会えてうれしかった。 

 ほしの親友まよぴ。かなこさんにも久しぶりに会えてうれしい。ビール差し入れてもらった。まよぴが作っている「ぬい天」というぬいぐるみを手に写真撮ってもらう。今回はふたりの好きな『北の国から』にまつわる本を用意しておらず大変申し訳ない。

 ボヘミ庵の読書会でご一緒したさやちゃんさん、森山さんもそれぞれ来てくれてうれしい。『バイロン詩集』(新潮社、1968年)の黒い函入りの装幀はさやちゃんさんに似合っていると思う。よく冷えたお茶を差し入れてもらった。森山さんとはお話できなかったが、またボヘミ庵に行けば会えると思う(本当によく会う)。

 古書市に出店するたびに来てくれるお姉さんにも会えてうれしい。ご一緒の方が100円均一の文庫から『車輪の下』を2冊手にしていたのですかさず「こっちのねえ、高橋健二訳のがいいですよ」と言う。別に尾崎喜八が悪いってわけじゃないんだけども。

 パン屋からの付き合いであるYちゃんとKさん。YちゃんがKさんに「これ、読んでみて」と『パンセ / パスカル 前田陽一・由木康訳』(中公文庫)を勧めておりかっこいい。Aさんは去年もぐらやの忘年会で「哲学という学問は、ない」と言い放っており清々しかった。

 青森最後の詩人ひろやーもきてくれてうれしい。子の手を引いていた。密かに目玉品としていた『星のひとみ / サカリアス・トペリウス』(岩波書店)買ってもらう。

 順子さんも来てくれてうれしい。先日帰省していたおてさんのことを、短い帰省だったけど家のことよく手伝ってくれた、と。そろそろパウンドケーキの焼き方を習うために家のピンポンを押さねば。

 棟方志功記念館の学芸員・竹浪さんもきてくれてうれしい。自分が無駄にせわしなくしておりあまり話せなかったのが悔やまれる。竹浪さんといっしょに眺めたく並べた『川上澄生全集』は見ていただけただろうか。クッキー差し入れてもらった。

 老舗の吉田屋とは仮の姿で何といってもアナログ貸本サービス「サバンナprime」の創始者である佐伯氏も蕎麦を打ち終えた身体に鞭を打って駆けつけてくれた。16時を過ぎても1 pon tan さんに絡み続けていたのを引き剥がす。

 17時までに完全撤収しなければならず、最後までゆっくり楽しんでくださっていた方たちにお帰りいただくよう声をかけるとき心苦しかった。申し訳ない。

 さよはし画房で『宙海町ねこまた堂 / もなか』(KADOKAWA)、車庫いのぶたで『ブンバップ / 川村有史』(書肆侃侃房)買い、それぞれサイン入れてもらう。レインボーブックスで『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる / 石井好子』(暮しの手帖社)、ボヘミ庵で『夏の闇 / 開高健』(新潮文庫)、『幸福論/ アラン 串田孫一中村雄二郎訳』(白水社)、風見鶏Booksで『言葉を使う動物たち / エヴァ・メイヤー 安倍恵子訳』(柏書房)、ノルドベースで『グッモー!質問編・回答編』、『飲食ZINE』買う。ノルドさん手製の版画かっこいい。書肆ミクロコスモスで『おかずとご飯の本 / 高山なおみ』(アノニマ・スタジオ)、満天の星で『ライムライト/ 月波与生』(満天の星)、『タコのくに』、ミツバチ舎で『花のたより』、本屋らむねくりで『別冊らむねくりソオラア号』、牧師と詩人で『観光記 / 池田彩乃』(言祝出版)、『牧師と詩人本』買う。すべて煉煉堂のレジから持ち出した金で。全ての店を見て回ることができず申し訳ない。ひとりひとりとゆっくり話がしたかったが。

 搬出でも無能ぶりをいかんなく発揮する。書肆ミクロコスモスの私物の台車を堂々と盗むなど。今日に至るまで、出店者の皆様をはじめ、多くの人に助けられた日々だった。武藤さん、せとさんに励ましをいただいたことも大変うれしかった。皆様へ心より感謝申し上げる。

 17時頃いったん帰宅。ボヘからもらった今川焼をふた口食べただけだった。気が抜けつつも気の抜けてないコーラ飲んで武藤良子さんの「曇天画」Tシャツに着替え自転車で出る。

 18時半もぐらや。自分、ほし、ボヘ、かれんちゃん、かさぶた、レインボーさん、風見鶏さん、月波さん、牧師と詩人、三重県代表ソントン夫妻、川村さん、つんつん、古書らせん堂の三浦さんで打ち上げ。

 まあ飲んで酔っ払ったのであんまり覚えてないんだけども、風見鶏さんがPowerPointで作成したZINE『鬼コ図鑑』を見せてもらってうれしい。新聞記者としての取材力はもちろんながら風見鶏さんのスコチック(棟方志功的)な人柄を感じられていい。「ZINEって、ジン、って読むんですね、ずっとザインだと思ってました……」とかさぶた。トイレから出ると、レインボーさんが堂々と三重県の県庁所在地を発表していた。ピースしてくれるかれんちゃん。川村さんを脅して群馬から持って来させた「尾瀬の雪どけ」をみんなで飲む。彩乃さんとハグしてうれしい。前歯をぶつけて申し訳なかった。ソントン妻に「この人むっちゃ好きやわー」と言われてうれしそうな三浦さん。酔って机に突っ伏して眠るかさぶたの肩が岩崖のようでかっこよかった。はなかりのムードメーカーことつんつん夫妻。今度は月波さんもいっしょに飲めたらいい。終始ボヘの細やかな気配りに感じ入る。21時半、大幅に予定時間を過ぎる。締めの音頭を任されたが締めたことないので「おしまーい」とだけ言って締め。つんつん夫に「今度おじさんの締め方教えてあげるよ」と言ってもらった。締め慣れていそう。今度締めのマニュアルをもらう約束。またすぐに会えるような感じでみんなを見送る。熊谷さんが沼田商店のカマボコをお土産に持たせてくれた。

 もぐらやの斜向かいにある、ラムだけ置いてる立ち飲み屋いいわけを覗く。佐伯氏が「さっき1 pon tanで買った、いいよね」と首振りこけしを手にして出てきた。今度みんなを誘ってシネマディクトで『マリウポリ20日間』を見る約束。「本当の戦争反対って、これなんだよ」と映画について佐伯氏が語っている間ずっとこけしの首が揺れていた。佐伯氏が「あ、月きれいだよ」と言う。西の方角に三日月を眺めて別れる。

 22時頃帰宅。たのしかった。天気の機嫌を伺うがあまり青森の空にオーロラまで発生させてしまって申し訳ない。

「はなかり市」終了いたしました

 

 11月4日土曜日、青森市新町和田ビル2階「プラスえん」にて、第一回目となる一箱古本市「はなかり市」を開催いたしました。ご来場いただいたみなさま、関係者のみなさまに、4枚切りのトーストほどの厚い御礼を申し上げます。ほんとうに、ありがとうございました。当日の様子を、東奥日報社文化出版部の記者の方に取材していただきました。11月12日付の朝刊の文化面に掲載予定です。お楽しみに!(予定は変更になる場合がございます)

 

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 一箱古本市の計画は、今年の1月から始まりました。年明け早々、古書らせん堂の倉庫で、三浦さんに企画書を読んでいただきました。ここで、運営についての助言や励ましをいただき、修正などを重ねました。当初、団体として発足する予定だったのですが、私の転職活動がちょっと忙しくなってしまい。ぼんやりとした案のままでは周囲に声をかけることもできず、気がつくと雪は溶け消えて桜の季節になっていました。

 事がふたたび動き始めたのは5月のことです。三浦さんの計らいで、会場となった「プラスえん」を運営するSAN Net青森の代表・根本さんに、この時はじめてお会いしました。商店街や公園、神社の境内など、全国各地で行われている一箱古本市にならい、屋外での開催も選択肢にはありました。ただ、第一回目の開催が天候に左右されることのないよう、今回は室内開催としました。「プラスえん」は、青森ペンクラブの会合『青ペンカフェ』の会場でもあり、これもまた恵まれたご縁なのでした。

 7月、尊敬する友人のKOUKISAITOさんに、一箱古本市で使用する絵の依頼をしました。東京での個展を終えたばかりで忙しいはずでしたが、どうしても彼に描いてほしかったため、無理を言ってお願いしました。「ほとばしるままの角度で描きたいと思います(竜巻の絵文字)」

 7月22日と23日、青森市森林博物館にて、三ノ月舎主催・あかつき堂協力の『あおもり古書市』が、『夏の工芸学校』とあわせて開催されました。私も「はなかり書店」としてはじめて出店しました。運営の参考にさせてもらったところが多くあります。こんなところでお礼を言ったって仕方がないのですが、ありがとうございました。また、出店者として参加したことで、あたらしい出会いも生まれました。「売りたくないけれど見せびらかしたい本」として持っていった『写真 棟方志功』(講談社)が好評でした。

 8月、絵をたずさえて、KOUKISAITOさんが東京から青森につかのま帰ってきました。彼の実家(うちの実家とまあまあ近い)にて、原画を手渡していただきました。ほんとうに素晴らしい絵を描いてくださいました。この絵はちらしに使用したのですが、とても好評で、「イベント終了後、ちらしをほしいです」とおっしゃってくれた方もいました。

 

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 いよいよ、正式に開催の告知をしたのはこの頃です。出店者については、8月19日から9月末までのおよそ1ヶ月半のあいだで募集しました。当日、実際に出店していただいた方だけではなく、ほか数人の方からもお問合せをいただきました。「行ってみたい」といった声もうれしかったです。大げさにいうと、いよいよ私も花の矢を世に放ったのだ〜、と緊張した気持ちのほうが大きかったですが……。勇気を出してお問い合わせしてくださったみなさん、ほんとうにありがとうございます。

 ここからが、第一回目の大いなる反省点となります。今回、広報活動に力を注ぐことができず、周知、集客がおろそかになってしまいました。出店者のみなさま、大変申し訳ございませんでした。本来であれば、ポスターやちらしで大々的に告知するべきところでしたが、休日の多くの時間を、趣味の登山に割いてしまったことが要因です。次回は、山に登りながら企画と運営を行いたいと思います。また、広報活動については、財政面も大きく関係してきます。団体としての体制と実績をつくるところからになってしまいますが、今後の必須課題です。

 9月、会場の採寸作業のために和田ビルを訪れたところ、根本さんから、オーナーの和田さんがお亡くなりになったということを聞きました。春に、一箱古本市をここでやらせてほしい、と三浦さんが和田さんに話をしてくださったところ、和田さんは快諾してくれたばかりではなく、会場費の補助のお約束までしてくださいました。和田さん、直接お礼を伝えることができず、申し訳ございません。ほんとうに、ありがとうございました。

 10月、家に届いた青森ペンクラブの会報で、和田さんが、坪内逍遥編の『禁酒宣言 / 上林暁・酒場小説集』を取り上げ、軽んじられるべきでない私小説について引用していました。「自己と自己の身辺日常生活を見詰めて書くということは、広い社会を描くのに劣らず、無限の仕事であると私は信ずる。」(作中の引用文)

 そして、11月4日、みなさまの多大なるご協力のおかげで、第一回一箱古本市「はなかり市」開催の日を迎えることができました。和田ビルの階段を登って、ガラスの扉を開けてくださったみなさま。ぼろぼろの運営にも関わらず、最後まで信じてついてきてくださった出店者のみなさま。応援してくれた友だちのみんな。かれんなかれんちゃん。天才数学者ひなみくん。もぐらの親子。ほとばしる絵を描いて手渡ししてくれたKOUKISAITOさん。八甲田ロープウェイの無料乗車券を5枚もくれたさいとうさんのお母さん。青い目の猫のレモンとウーロン。ボヘミ庵の太田さん。かさぶた文庫の福原さん。まわりみち文庫の奈良さん。企画の立ち上げから、いいえ、それよりもずうっと前から、見守ってくださっていた古書らせん堂の三浦さん。一箱古本市のことばかりでなく、個人的な相談まで聞いてくださったSAN Net代表の根本さん。和田ビルオーナーの和田正彦さんとそのご家族のみなさん。ほんとうに、ありがとうございました。ほし、いつもほんとうにありがとう。私の実家の家族は、当日だれも来てくれなかったけれど、ま、いつもありがと。

 

 と、今生の別れコントはこのくらいにして、第二回「はなかり市」をよりよいものにすべく、さらに頭と手と足を動かしたいと思います。今回まいた種を、これから、ずっと、育てていきます。いつか花が咲いて、いつか誰かが心で狩ってくれたらいいなあ。ほんとうに、ありがとうございました!そして、これからも、よろしくお願いいたします!

 

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ただ忘れっぽいだけで天使ではない

 

 10月15日日曜日。

 7時頃起床。前の勤め先であるパン屋で買って冷凍していたくるみのロデヴ、バゲット2切れ。アボカドとトマトのサラダ、スクランブルエッグ、ベーコン、サラダ、家主からもらったりんご。

 食べ終えた食器を片して台所周りの拭き掃除。アパートの裏でほとんど放ったらかしで育てていたミニトマトの苗、枯らしてしまったホワイトアンとパイナップルセージの鉢を片付ける。ついでに玄関前の掃き掃除をした。やたらと蛾が死んでいる。

 高校を卒業した頃に買って以来ほとんど着ていないワンピースを着てみた。普段はオニツカタイガーのセラーノ(特にこだわりはない)を履いているのだけど今日は革靴を履いた。槙野のまんちゃんは正装で山に入ってたから。

 11時頃代車で出る。青森空港の有料道路を通らないようにして浪岡へ。ファミリーマートでオレンジジュース買い、再度道を確かめてから出る。国道沿いにある杉沢のガソリンスタンドでガソリン入れる。レギュラー満タン。3,000円を入れ、増え続けるメーターに慄きつつも2,700円くらいで済んだ。

 国道をしばらく進んで藤崎町。右手には薄墨で描いたような岩木山が見える。風に揺れるコスモスを横目に、とはいかず、運転に集中してずっと真っ直ぐ。

 弘前市。二つ目の橋の下を通ってスズキへ。点検してもらっていた車を受け取る。クレジットカードが読み取れなかったため現金で2万4千円を支払った。

 牧野富太郎は山へ植物採集に、鳴門煉煉はブックオフ弘前城東店へエゴン・仕入れに。一箱古本市を企画したはいいものの売ってもいい本を持ってない。一通り全ての本棚を見る。昭和40年代に刊行された岩波文庫の緑帯、宮沢賢治詩集など。全く、インテリぶってやがるぜ、と思いながら抱えて出る。

 みのりのトンネルを抜けて北大通り(パチンコに造詣の深い者であれば『ほくだいどおり』と誤読してしまいがちだが正しくは『きたおおどおり』である)を左折、土手町の郵便局のある通りへ出る。中三に車を停めて歩いてかくみ小路へ。まわりみち文庫。奈良さんに久しぶりに会えてうれしい。外の均一棚から『伊藤整詩集 / 伊藤整』『芸術と実生活 / 平野謙』(いずれも新潮文庫)、『一房の葡萄 / 有島武郎』『貧しき人々 / ドストエーフスキイ 井上満訳』(いずれも岩波文庫)買う。先日まわりみち文庫で行われた「さみしい夜の句会」の話。あいにく自分は一人でいようが誰かと共にいようが寂しさという感情に縁がないが川柳には興味がある。大きな声で笑って楽しかった。『はじめまして現代川柳 / 小池正博編著』(書肆侃侃房)買う。久しぶりに短歌の歌会に参加したくなった。「はなかり市」のチラシを貼ってもらう。

 店を出ると細かな雨が降り出していた。中三の地下にある食品売り場でサンドイッチを買い、駐車券に無料のハンコを押してもらいたかったのだがハンコではなく機械で何かしてもらった。

 15時過ぎ出る。雨が強まる中をサンドイッチと時々オレンジジュースを飲みながら走る。藤崎町あたりまで来ると雨は弱まり、信号を待つ長い列でコスモスを見た。日差しは無かったが、刈り取りを控えた稲は発光しているように金色だった。

 16時半過ぎ帰宅。18時半頃晩飯。大根おろしをたっぷりかけた厚揚げと茄子の煮浸し、空芯菜の炒め物、里芋の煮物、みずの炒め物、サラダ。

 

 

 

 よかった。

 

 これを18日水曜の夜に書いているが、多くのことを書き損ねている感触だけが残っていてとても嫌だ。私はただ忘れっぽいだけで天使ではない。