生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

季節に配慮しなくてもいい

 

梅のおにぎり、ポカリスエット

 あの態度が果たして熱心だったのかと精査すればまあ違うだろうけど、練習量だけでいえば相当なものだったと思う。中学の頃所属していたソフトテニス部でそれなりの活躍をして地区大会で優勝した秋の新人戦の後になぜか部長をクビになった。

 練習には母が握ってくれた梅のおにぎりを持っていった。自分は梅干しに喜びを見出せるほど達観した中学生ではなかったから、本当はチャーハンのおにぎりのほうがよかったけれど、3年間も食べ続けているとさすが嫌いになることもできなくなっていた。一度、かばんの中で腐ったおにぎりを発見したことがある。梅だって数日放っておけば腐るのだと知った。見た目にはラップに包まれた吐瀉物だった。

 今日、父と弟とテニスをする約束があった。スポーツ公園へ向かう途中で梅のおにぎりとポカリスエットを買った。今ならばおにぎりとお茶を選ぶだろうけど、あの頃はおいしさなんて求めてなかったから。梅のおにぎりをポカリスエットで流し込んでいるところをコーチに見られたので私はクビになったんだろうか。

 

ビール、シードル

 ほしさんと14時にアスパムで待ち合わせをしたのだが私が6分遅刻した。青い海公園の一帯にテントやキッチンカーが並んでおり、いったい何の催しなのかわからないまま近づいてみたら肉(にぐ)フェス、だった。

 平川サガリ研究会の研究員たちがテントの奥で肉を焼いていた。網の上で肉を転がしてる彼らも誰かの手のひらの上で転がされてるんだろうか、とは思わなかった。サガリを使用したレトルトカレーの袋を触らせてもらった。触るだけなら0円。サガリの炭火焼きを買った。皿でなくアイスクリームのカップみたいなのに盛られていた。

 残り3枚のステーキがなかなか売れないエヴィエで生ビールを買う。今年の夏、このプラスチックのコップに何度世話になったことか。受け取ったらほとんど泡だった。

 飲食するための椅子やテーブルが用意されていたけれどアーチ状になってる銀色の車止めに寄りかかっていたほうが落ち着くのでそうした。乾杯して口をつけたビールが青森港から吹いてくる風よりもぬるい。季節に配慮したんだと思う。しなくていいと思う。人間(私)はこの宇宙で極小の存在なんだから。だから、もっと冷たいのをくれないか! 仕事終わりに自転車で青い海公園に寄ってコンビニで買った缶ビールをひとりで飲む時間が好きだったが今年は一度もやらなかった気がする。

 アスパムの土産屋で冷えたシードルを買った。栓抜きがないからほしさんが歯で開けようとしたけれど歯のほうが先にが抜けそうだったから十円玉を使って開けた。ベンチに座って遠くの灯台を見ながら飲んだ。ワインのような。海鳥が騒がしかった。空も海も似たような色をしていた。16時前だというのに日の暮れる気配がした。

 

栃尾の油揚げ

 まろやかな酒気を帯びながら古書らせん堂の外の棚を眺めていたらガラス窓越しに三浦さんの姿が見えたので手を振った。三浦さんは「店番してけ」と言い残して郵便物を出しに近くのポストまで駆けていってしまった。私が店番をしている間、荻原裕幸の『永遠よりも少し短い日常』を持って帳場へやって来たほしさん以外には誰も来なかった。

 三浦さんに栃尾の油揚げを教えてもらった。厚い油揚げに切れ目を入れて納豆とねぎを混ぜたのを挟んでオーブントースターで焼くと格別にうまいのだそうだ。雪どけの季節が好きだけど雪が降らないことには始まらない。棟方志功全集の売上の1割で1杯いかがでしょうか、と言いかけてやめた。栃尾の油揚げさくら野百貨店の催事で売られているというので三浦さんと別れた後買って帰ることにした。

 6階の催事場は混雑しており、油揚げを買うために列に並ぶのははじめてのことだった。受け取り手に持ってみてその大きさと重さに驚く。iPhoneなんてやめて、この油揚げを持ってたい。

 スーパーふじわらで買い物をしてから家に帰った。油揚げに納豆を挟もうとしたけれど、すでにねぎ味噌がぎっしり詰まっているやつを買ってしまったのだった。8つに切り、半分はそのまま焼いて食べた。焼いた油揚げの歯ごたえよ。唐辛子の効いたねぎ味噌の表面を焦がすようにして焼けばもっとうまいかもしれない。目が赤くなるまで飲んだ。