9月4日日曜日。
父親と奥入瀬渓流へ。
サイドミラーに映った自分と目が合い、自分が笑いを肯定している態度は実は心の底からのものでなく、そうすべきであるという幻想によるものなのではないか、という疑いに気がついた。
「日が当たんねば寂しいな」と父が言った。乾いた岩がほとんど見当たらなかった。
行きは地形図を見ながら雲谷、八甲田ロープウェー山麓駅、酸ヶ湯を経由した。鳥居のそばにある登山道入口から大岳を見上げた。
帰り道は田代平を選んだ。山の胴体を這うようにして霧が北風に流れていった。冬が来ればそこらの梢や芒に雪の粒が実る。その美しさを思い出すときの人間、その表情。