生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

弘前開拓記

 

 6月26日日曜日。

 温泉と仕事のため6時頃家を出るほしさんを見送り、部屋に戻ってから二度寝する。

 10時半過ぎ自転車で出る。アウガの駐輪場に自転車を停める。お土産にさくらんぼ持っていこう思ったけどあまりに暑いのでよす。11時21分発奥羽本線弘前行に乗り弘前駅へ。ヴァージニア・ウルフの短編集。

 城東口から出る。事前に伝えられていた車を見つけたので走る。向こうも気づいてこちらへ来てくれた。まべちゃんさん。会えてうれしい。

 和徳町にあるごはんやままごせで昼食。メニューは全て千円で名前が独特。「こったらに(津軽弁で『こんなにたくさん』の意)カレー」にする。ほいど、なので。まべちゃんさんは「シン・キンパらず」にした。▷「こったらにカレー」は「鱈がたくさん入ったシーフードカレー」であり「シン・キンパらず」は巻いてないキンパであった。カレーとてもおいしい。店主の人がにやにやしながら種明かしをするのがよかった。仕事の話、フィッシュマンズの映画の話など。店内に折坂悠太がそのうち流れますよ、と店主の人が言ったけれど店を出るまで流れなかった。

 ゆっくりできてうれしい。ままごせを出、運転席のドアを開けたまま走り出すまべちゃんさん。慌ててドアを閉め「私、ゴールデンになりたいから…」と。犬の話か何かかと思ったらゴールド免許のことだった。

 代官町へ。みちのく銀行に車を停めて歩く。石田パンのある通りだが日曜は休みらしい。green、green furniture、THE STABLESと雑貨やアンティーク家具の店を続けて見る。古いランプやら陶器の馬の置物やら、この空間にはよく馴染んでいるけれど自分の部屋に持ち帰った瞬間に朽ち果てて粉々になりそう。服にしろ家具にしろ雑貨にしろ、眺めているのは好きだが自分が身につけたいとは思わない。似合わないので。THE STABLESで鳥の描かれた絵はがき2枚買う。代官山、みたいな店に入ると映画『インスタント沼』の、わずかな物音を立てるたびに「シーッ」と言う骨董品屋を思い出して集中できない。

 「おやつを買いましょう」と最勝院のそばにあるゆぱんきへ。まべちゃんさんが「お先にどうぞ、その方がわくわくすると思うから」と道を譲ってくれた。石畳の上を歩く。緑に覆われた狭い道の先に、黒猫の看板の小さな店が現れた。マフィンやスコーン、サブレなどの焼き菓子が積まれてあり、店の奥にはテーブルと椅子が数脚。よもぎとあずきのマフィン買う。坂口恭平がここでイベントを行っている最中にいのっちの電話がかかってきた話、キセルの兄弟喧嘩。

 びっくりドンキーの駐車場に車を停めてao +水玉へ。まべちゃんさんはここで天井から吊り下がってる照明を買ったらしい。ガラス表面の不規則なざらつきが光を複雑に反射しそうでその違いを毎日見られるのは楽しいかもしれないと思った。『小田嶋隆のコラム道』が800円の値付けをされて置いてあった。

 可否屋 葡瑠満(かうひいや ぶるまん)(すごい名前)を目指すも駐車場がわからず諦める。土手町へ。まべちゃんさんが大学時代に勤めて3日で辞めたという伝説のカフェ・ジーバへ。行きづらかったそうなのだが「なんか今日は行けそうな気がします!子も産まれたし」と。店長に気づかれぬよう通りに面した席に座る。ミントの浮いたお冷。コーヒーフロート、ヘーゼルナッツラテ、ハニービスケット。カウンターに背を向けて話す。まべちゃんさんの構想。編集者の苦悩を聞くことができてよかった。「お水のお代わりいかがですか」とやってきた店長を断れず、スリルを味わった。

 16時前出る。土手町の通りを駅方面に目をやると、見渡す限り青信号が続く。「ずっと見ていたい」と、まべちゃんさんがつぶやいた。

 鍛冶町を通る。道の真ん中に鳩がおり近づいてもなかなか避けず。減速するまべちゃんさん。優しいな、と思ったら「馬鹿な鳩ちゃんもいるから」と結構辛辣なことを言った。

 弘前駅まで送ってもらって別れる。また会いたい。楽しかった。男達の別れ。16時15分発奥羽本線青森行。2番線から出るのに誤って1番線のホームに降りる。弘前駅では何かと過ちを犯しがち。階段を駆け上がり、駆け下り、岩木山を背にして座ると電車が動き出した。山の濃い青と薄い青が見える。全く眠くならなかった。

 地元で、生まれ育った土地で、やりたいことをやりながら生活できないのはおかしなことだと思った。まあ、どうにかなると思う。青森駅新町通りを歩くと雲が見当たらないのに雨が降っている。湿っぽい温度と乾いた風。信号を待ちながら、自分が様々な矛盾の中に置かれていることが気持ちいいと思えた。少し歩き回ってから自転車で帰宅。

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