生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

「あ」

 

 有給もらってパン屋休み。曇り。たまってた燃えるごみ片づけシャワー浴び朝飯。父が車出してくれたので乗せてもらい、らせん堂へ。三浦さんに会うのは3週間ぶり。石臼挽き小麦のフランスパンわたす。日本酒のんでパンちぎるのかっこいい。着ていたシャツの襟をほめてもらってうれしかった。普段はリサイクルショップで買ったフリースに穴開いたジーパン、という出で立ちだからちょっと情けなくもあるが。お祝いの言葉を預かる。ありがたい。しかし本買わないで出てきてしまった。交差点を渡り、路上駐車してる父のところまで走って行く。いったん帰宅して父、母、弟とふたたび出る。

 弟の高校の卒業式。はやり病の関係で式に参加できるのは1家族2名まで。本来であれば両親が列席するものなのだろうが、父は「式に出られるような服を持ってない」、母はこういう行事に関心がないので行きたがらず、というわけで自分も参加することになった。式中にお腹鳴りそうだったので飴を立て続けに3個舐めながら始まるのを待つ。壇上を指さし小声で「あそこに盆栽あるよ」とか言ってくる母。卒業生入場、弟が歩いてるのを見ただけで目に涙たまる。感染拡大防止の観点から校歌や国歌の斉唱はなし、音源のみが流れる。卒業証書授与。卒業生二百数十名の代表として弟の名が呼ばれる。留守番してる父に見せるため、塀の向こうを覗くみたいにして首伸ばしながらスマホで撮影。弟らが過ごした最後の1年について拙い想像してみてもただ気の毒に思うことしかできない。自分がもしこの時代に高校生であったなら、あらゆる自由を奪われる理不尽さに耐えられず虚空に向かって糾弾するしか術を持ちあわせなかっただろう。希望に満ちたことなど自分は言いたくはないが、過去と現在は地続きであるという実感が確かにあるのだから未来もまたそうであるに違いない。式が終了し弟を待つ。自分の卒業式のときは誰よりも早く教室を出て「卒業証書授与式」の看板に軽く蹴りを入れ一切の未練もなく校舎を後にしたものだが、弟は仲間らと写真を撮ったりして楽しそうにやっていたのでよかった。駐車場に特殊な幌付きの軽トラックが停まっており荷台を見るとさっきまで壇上にあった盆栽。校長でも卒業生代表でもないのにこんなに近くで見られてうれしい。サイコー、と言う。雨降り出す。

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 弟に食べたいものあるかと聞いたがとくになさそうだったのでくら寿司で遅すぎる昼飯食べる。弟は生ものがだめなのでポテトだのラーメンだのばっかり頼んでたがわりと満足そうだった。自称スイーツ男子である弟が逡巡の果てに豪華なデザート580円を注文、高揚を隠しきれずに待ってたのだが店員が席へやってきて売り切れを告げる。その後弟は280円のデザートを注文していた。

 高校時代よりもっと昔を思い出す。父も母もいない週末の夜、弟と二人でひらがなの練習をして初めて弟が「あ」と書いたとき、うれしくて自分は父の携帯に電話を掛けた。電話の向こうは騒音が激しく、父が何と言ったのか聞き取ることはできなかったが、それをさほど重要なことだと思わないのは昔も今も変わらない。複雑でもないが単純ではない思いがあって自分は姉をやっている。弟から「お姉ちゃん」と呼ばれたことは一度もないけれども。