生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

言葉が言えないから理解できないなんて思わないで

 

 12月8日木曜日。

 読みかけの本の続きを忘れて。23時、ほしさんがシャワーを浴びている間に居間のテーブルでパソコンを開いてこれを書いてる。寒いからかパソコンがなかなか立ち上がらなかった。

 勤め。出張で身体障がい者の支援施設へ行った。身体障がい者手帳1級の人たち。立つことができないので地面を這うようにして移動したり、手足を持ち上げられて引きずられるようにして運ばれたり。休憩してください、と言ってコップに注いでもらったポカリスエット。施設で作っている会報みたいなのをもらった。「障害」の言葉はすべて「障がい」と表記されていた。「障がい者の言っていることを、少しでも理解して欲しい。」「言葉が言えないから理解できないなんて思わないで、どんどん声がけしてね。見た目で判断すればダメだよ。」

 帰りの車で、同行した職員の人が「天使みたいな人たちだったね」と言った。「やまゆり園の事件とかあったけどさ、今日行った施設の人たちはみんな明るかったな」障がいを持つ人もその母親も。ずっと子供のままで大人になった人たちみたいだ、と。でも、そんなに単純なことじゃないんだろうな。ふさえさんが歌った『大人になったら』。明るい人でいたいと願うなら、影をそばに連れて歩く覚悟が必要なんだと思う。でもそれは孤独な作業でいい。誰もいない道。カブセンターの第二駐車場のいちばん端にしか車を停められなくても生きていていいと思った。壊れそうなくらいの笑顔。

祝われる気持ち

 

 12月4日日曜日。休日。昼にうどんを茹でたのをラーメンどんぶりによそってふたりで3玉食べた。にんじんやらごぼうやらなすやら長ねぎやら油揚げやら鶏肉やら具をたくさん入れたやつ。朝食を抜いたからか余計にうまかった。昼食のあとで傑作版画『おしり』の原版をほしさんに見せた。13時頃、居間のテーブルでパソコンを開いてこれを書いてる。コーヒーとアルフォートのビター。

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 12月3日土曜日。勤めのあとでほしさんと傘を持って出る。いいもんですな。雪が雨に濡れていた。あばら骨のような雲が切った果物に似た月をかすめていったのを見た。毎日通りかかっていたのに一度も入ったことのない酒屋。物件探しのサイトからもらった祝い金5,000円を握りしめてもぐらやへ。熊谷さん。席につくとあたたかいおでん、さば缶とらっきょうのなんかとてもおいしいやつを出してくれた。引越し祝い、と。うれしい。生ビールで乾杯する。ちくわ天、からあげ、もつ煮込み。お通しの大根の漬物をすこしずつ齧るほしさん。リアルゴールドハイ(黄色い飲み物の本流はこっち)と赤武のあたらしい白いラベルのやつ飲む。ほしさんはハイボール(ちょっといいやつ)、北海道の酒「三千櫻」。おいしい、って一口食べるごとに言ってた気がする。ガンギマリ猫。もう小便したら湯気が立つ季節で。

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 会計済ませ、熊谷さんに手を振って21時頃出る。歩いて古川のデイリーヤマザキへ。酔っぱらって滑って転び右半身を打って面白かったので笑った。毎年転ばないように気をつけて歩いているが、積雪3日目にしてすっ転んだ今年は全身を車輪にしながら雪道を転がって"あさぐ"と思う。ほろよいのゆずみつサワー買ってもらい汚いフリースのポケットに突っ込む。菊水ふなぐち。帰りは雨が強くなって傘を差した。地下道へ続く階段を降りても傘を閉じずに歩いた。肩を組もうとほしさんに手を伸ばしたら傘で殴ってしまった。

 22時頃帰宅。シャワー浴びて歯をみがく。2012年の冬。ほしさんがローテーブルと人がダメになるソファを隣の部屋から居間へ運んできてくれた。ほろよい一口飲んで床で眠ってしまう。

 

小林製薬の糸ようじ

 

 12月1日木曜日。休み。きのう初雪が降って、今朝カーテンを開けたら積雪が3センチくらいあった。台所と風呂場の水漏れがひどいので業者に直してもらっている最中、居間のテーブルでパソコンを開いてこれを書いている。

 勤めの日の朝からキャベツの千切りの練習をして時間がなくなり慌てて家を出て鍵を閉め忘れたり、ガスコンロの火をうまく点けられなかったり、加湿器の水を流しに捨てようとして床に撒いたり、最寄りのスーパーまで車を運転して帰ってきて家の前に駐車できなくて助けを求めたりしている。切り過ぎたキャベツはきのう冷蔵庫の中で黒くなっていたから適当に炒めて味をつけ米の上にのせて食べた。「彼女 家事 できない」と検索したらヒットしたYahoo! 知恵袋には「別れたほうがいいですよ」と書いてあった。仕事で「市民の貴重な時間を奪いやがって」と吐き捨てられてもべつに何も感じなかったが、一緒に暮らしている大切な人の貴重な時間を奪っている現状ほどつらいことはない。と、暗い感じになっても仕方がないので洗面所のフロスピックの箱に「小林製薬の糸ようじ」と書いた付箋を貼っている。

 29日はかれんちゃんが泊まりにきた。かれんちゃんとほしさんが並んで台所に立つ光景を後ろから眺めていた。かれんちゃんの油淋鶏と焼きビーフン、とってもおいしかった。かれんちゃんが引っ越し祝いで花とおちょことお皿をくれた。花はほしさんがモンベルの銀色のコップに生けた。茎を結わいていた輪ゴムをほどいたので経口いっぱいに広がった花。ほしさんが「のびのびしてていいでしょ」と言った。高橋竹山の生い立ちをYouTubeで見ながら酒を飲んだ。『うさぎのさとうくん』の読み聞かせ。宇多田ヒカルという動詞。三人で川の字になって眠った。かれんちゃんが車を運転してほしさんを職場まで送ってくれて解散した。夕方に玄関のチャイムが鳴り、かれんちゃんが手作りのスイートポテトを持ってきてくれた。

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 昨晩の餃子はおいしくできたと思う。25個包んでるあいだに要領を得られず最後までいびつな形だったけども。あたらしいフライパン。三浦さんからもらった『青森県の山』(東奥日報社刊)。21時半頃布団に入る。深く眠った。

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 コーポ白樺は元気にしているだろうか。達者で。

転居

 

 19日土曜日。青森市内のアパートに転居した。引越し当日はほしさんの両親と自分の父と弟に手伝ってもらい午前中で荷物の搬入を終えた。洗濯機の段ボールの上で引越し蕎麦ことどん兵衛カップ蕎麦を食べた。

 階段の踊り場に放置されていたほうきがかわいらしく使い勝手もよいのでもらった。トイレの便器内の黒ずみがひどいのでドメストを数度噴射してもらった。

 20日日曜日。家具の組立をあらかた済ませてだいぶ部屋らしくなった。南向きの窓から入る日差しが心地よい。食卓の上に置いたみかんが輝いていた日。カブセンターで調味料など買い揃える。

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 21日月曜日。互いに休暇を取り、朝から市役所で手続きをした。

 その後免許センターへ行き住所変更の手続きを済ませる。免許センターから久須志のハッピードラッグまで運転した。母親に会ったら開口一番「あのさあ、冷蔵庫に置いてった長ねぎとごぼう塩麹とポン酢とにんにくと草、持ってってくんない」と言われた。実家へ行き回収した。

 家具の組立という組立のすべてで何かしらの過ちを犯す。

 22日火曜日。勤め。ちょうどほしさんと帰りの時間が一緒だったので合流したが、私が先に自転車でアパートへ帰り、車でほしさんを拾うことにした。車道の端に寄せすぎて、電柱にぶつかる寸前のところで停車した。肝が凍ったほしさんと運転を交代し、スーパー福やで買い物。キッチンペーパー、肉など。

 23日水曜日。勤労感謝の日で休日。その名に文句のひとつやふたつ言いたいところではあるが特段思い浮かびもしないので実際は大して何も思ってないんだと思う。

 サンルームに溜めていた発砲スチロールのごみを出すことができて気分がよかったが、その後は無為に午前中が過ぎていった。鶏のささみを茹で、トマトときゅうりを添えて棒棒鶏みたいにしたのを夕飯にしようと思ったのだが、変な料理が出来上がってしまい虚しくなった。一人で全部食べる。

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 13時頃歩いて出る。浪館通りの神酒店へ。「日本酒が好きなおじいちゃんへの誕生日プレゼントを探しているのですが」と店主に相談し、山形の天弓の紫のラベルにする。自分用にピンクのラベルのやつ買う。

 ワラッセへ。アメリカと台湾の国際交流員であるベンさんとウさんによるイベント。紙で作る台湾の虎のランタンもらう。瓶吊りや麻雀ビンゴなどやりたい遊びがたくさんあったが私は良識のある大人なので未来あるちびっ子どもに譲ってやる。

 古書らせん堂へ。外の棚から『友人たち / 恋人たち / ロバート・ブレイン』(みすず書房)、『読書について / ショーペン・ハウエル 斉藤忍随訳』(岩波文庫)、『ワイン 七つの楽しみ / なだいなだ』(平凡社カラー新書)手に取って中へ。久しぶりに三浦さんの顔をみることができてうれしい。「しばらくでした」と挨拶。天弓渡す。よろこんでもらえてよかった。北林小波さんのポストカードを取り置いてくれていた。『milk』の絵が特に好き。なづき光る。三浦さんの話を聞いていたらボヘミ庵にまた行きたくなった。消毒仲間として「倒れるときも一緒だ!」と言い合って別れる。

 成田本店しんまち店で『キネマ旬報12月号』買う。あの『これが私の、』の著者である植村正美氏による寄稿文『夜の人々』。引用から紐が解けるようにして流れ始める文体。とか言っても野暮ったいけど。好きな文章。

 16時過ぎ帰宅。仕事から帰って来たほしさんに車を運転させてイトーヨーカドー業務スーパーで買い物。帰宅。甜麺醤と誤って大量の豆板醤を投入したために出来上がった鮮血より赤い回鍋肉。

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 旅でもするように生活したい。大泉洋のような。生活のような旅だって可能なのだから。努力あるのみ。ペンネームを本地梨(ほんじなし)に改めようかと思案している。ほんずなし。

汽笛

 

 11月18日金曜日。

 水の流れる石の壁。座面が限りなく正方形に近い、いまいち利便性に欠けるベンチ。コンビニで栄養を買うことの難しさ。鳩の重たい影を視線で追った。けれどすずめの軽い声が聞こえたら全身を使ってそれを見る。こんな自分の行為にいちいち意味を見出したくはない。無意識に後から意味を与えることの無意味。全てが必然的に行われていなければならないということはない。しかし適当の意味を履き違えた人間にはなりたくないから。駅前広場で11時57分から59分にかけて鳴り出した、何の曲か全くわからない鐘の音。12時ちょうどに鳴る汽笛。

騒がしき万緑の引力

 

 2022年8月の雑記『騒がしき万緑の引力』を掲載する。過去に書いた文章を編んだ本を制作していたのだけれど、そんなことをしている暇があったら新しいものを書けよ、と自分自身に対して思ったので。

 

 騒がしき万緑の引力

 

 古川から国道へ出る。県庁前を歩いていると号砲が鳴り、カラスの群れが一斉に飛び立った。堤町の交差点を海手へ折れて本町に入る。屋台からイカの焼ける匂いがする。網の上のホタテ貝なら盗めそうな気がしたけれどやらなかった。手を火傷するだろうから。本町一丁目の交差点を税務署通りに入って再び国道へ出た。3年ぶりのねぶたを追って、気がつけばこの夜は17キロメートルという距離を歩いていた。同じところをぐるぐる回り続けた。どこへでも行けるのは体か、心か?

 

 6年前、19歳だった。隅田川で花火を見た帰り、浅草から上野まで歩いた、鼻緒が擦れて痛いから裸足で。街灯の下に木製の椅子があった。腰掛けた途端に崩れそうな。一緒にいた人が「自分は10年後どうなってるのだろう」と言った、そのこと(言葉ではない、ことだ)を私は度々思い出すようにしている。予測も予報も当てにならない。過去の自分が「想像力は現実に屈しない」と書いていて、嘘だろ、と思った。そんな強靭な想像力を持っていたのなら、こんな言葉は使わないだろう。……どうだろう? 果てしなく(続いているように見える)敷かれた鉄路のどこかで果てることを、覚悟しているつもりではいる。

 

 大雨の被害に遭った人々に対して何も思わないはずはなかったが何も行動できなかった。車が運転できないという理由で。行動できないので人間は祈りを発明したのだろうか、と思った。祈りを発明した後の人間はより一層行動を重んじる必要があるなら、祈りの態度でいったい何が救えるだろうと悲観的な気分になった。
「祈りは祈る人間の内側に変化を起こすための行動じゃないのか」と、今年の6月16日の日記に自分が書いていたのを見つけた。被災したりんご農園を励ます言葉が全国から寄せられたという記事を東奥日報で読み、目の前が明るくなった。屈折しているのは私だけなんじゃないかということがすでに錯覚であると、理解している。その理解が正しいかどうかは別として。

 

 部屋の本棚を眺めていたら現代詩文庫の石原吉郎詩集が2冊あることに気がついた。第19刷のほうをリュックサックに入れて部屋を出た。市民図書館の7階の、居酒屋弁慶の看板がよく見える席で読んだ。私はアウシュビッツやシベリヤに値するものを持ってない。私には戦後が無いのではなく戦後を知らないだけなんじゃないか。ただひとつ確かなことは戦後を生きた詩人たちと地続きの時間を生きていること、これもただの願望かもしれない。中央市民センターで見た、焦土と化した青森市街の写真、窓の向こうに木々のざわめきを感じたことを、いつかは忘れてしまうだろう。錆びた匙は日光を反射しないけれど木漏れ日を掬うことができるとか甘いこと、言ってしまいそうになる。街路に植わっている白樺を見ては樺美智子、と思う。私は何と戦えばいいですか? と、時々誰かに尋ねそうになるけれど。

 

 You are not alone しかし We are all alone なのだ。今を生きる人間がやるべきことは今を素描すること。

筋肉は20世紀に置いてきた

 

 11月16日水曜日。

 筋肉は20世紀に置いてきた。昼、商工会議所下のセブンイレブンで、たんぱく質を摂れるサンドイッチ、プロテインバー、コーヒーを買う。味わいを選択することのできないほうのマシンで。

 「いい匂いがする、香水でなくてシャンプーとかの」と言われた。火山と草の香りの香水を買おうかと思っていたのだけれど、やめた。