生きてるだけで、ワーイ

鳴門煉煉(naruto_nerineri)の日記

愛燦燦

 

 土曜日。

 「ハッピィ」という青森のローカル番組中の、りんご娘の天気予報が土曜の楽しみ。今日は王林ちゃん。「現在の青森市のようすを見てみましょう。……白いですねえ」

 12時、万太郎堰を越えたあたりでドライブ・善蔵・カーが通りかかる。窓越しに手を振り合い、ローソンで落ち合う。あたたかい毛布。

 西バイパスのサンデーへ。サンデー大好き善蔵さん。車に積んでおく用のスコップを見る。アルミ製のやつかプラスチック製のやつかで迷う。スコ。CDコーナーにでんぱ組.incのアルバム。

 津軽自動車道を走って五所川原へ。ギャラリーカフェふゆめ堂。善蔵さんはここのご主人と仲良し。自分はここへ来るのは初めて。

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 古書らせん堂を彷彿とさせる配色の看板。

 扉を開けるとまさに設られた空間といった印象だった。店内は奥行きがあり、手前の小部屋は小さなギャラリーになっている。置かれた古道具や古本は購入できるらしい。中央にはカウンターがあり、コーヒーをいれたり調理をしたりしている様子が見える。テーブル席はそれらの奥にある。卓が4つ。壁際の本棚には画集や写真集など、美術にまつわる本や絵本が多く揃っていた。白い壁には善蔵さんが敬愛する青森市生まれの画家・野坂徹夫の作品が並ぶ。自分もこの人の描く絵を好きだと思った。形の淡さ。

 自分は窓を向いてソファに座る。贅沢。自分はカレー、善蔵さんはナポリタン。おいしい。ペンクラブの話など。本棚から小島一郎の写真集を手に取るも開かない善蔵さん。店奥には形のよい大きな窓が2つ並んでいるのだが、そこから見える木について「夏になると葉脈が透けて見えるのがいい」と話す善蔵さんが印象的だった。『ほろづき』の絵本を読む。ほろづき、行ってみたい。コーヒーをおかわりし、いつまでもくつろいでいると、ご主人がバナナとくるみのスコーンを出してくれた。感極まった善蔵さんが泣いていた。自分はひと口食べてバナナの風味を感じたが、善蔵さんはしばらくしてから「これ、バナナ味だ!」と世紀の大発見をしていた。

 帰り際、『人間をみつめて / 神谷美恵子みすず書房を買う。らせん堂と三浦さんの話で盛り上がる。ふゆめ堂は間もなく冬季休暇に入り、3月から営業を再開するそう。ご夫婦には元気でいてほしいと思った。店を出、駐車場の雪山から突き出た木の枝を見る。善蔵さんが「冬芽だね」と言った。

 車で板柳町、鶴田町を走る。善蔵さんの思い出話。とてもいいと思う。アルプスおとめ、美空ひばり津軽鉄道沿線の道が凍って薄く光っている。羽生結弦くんに滑ってもらいたいですね、と言ったが滑ったのは私だった。

 弘前へ。太平洋画房。ぎゅっとした画材屋さん。パステルや油絵やってみたい。一度やったら飽きると思うけれど。

 おしゃれな善蔵さんに連れられて古着屋fictionへ。スウェーデンの緑、とかフランスの緑、とかがあるらしい。服を見ている善蔵さんを見るのが楽しかった。店の人と仲良く話す善蔵さんかっこいい。耳の置物だと思ったら腎臓の置物だった。

 近くのセブンイレブンまで歩くだけで楽しい。友達。コーヒー屋の前にかわいい雪だるまがあった。

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 どてまちスカイパークに車を停めてかくみ小路。まわりみち文庫へ。奈良さんに会えてうれしい。『星を撒いた街 / 上林暁』夏葉社、『小鳥たちの計画 / 荒内祐』筑摩書房買う。奈良さんに「すみません、私と善蔵さんの写真を撮っていただきたいのですが」と言って写真撮ってもらう。快諾してくださってありがたい。店の外まで送ってもらう。

 青森市へ。黒い夜道を走りながら話す。不道徳に溺れはしないが、私は失敗を繰り返している。失敗でないように思える現在もいずれ何らかの形で失敗へと転じるだろう。これが時間の仕業かどうかは知らない。ただ、であれば、私は失敗の現在に耐えたい。耐え続けたい。失敗しないということを諦めたい。今の私は、生きている人間にはもはや未来しかないと思っている。いつまでも成功することを知らない人生であり続けたい。敗北し続けることによって得られるかもしれない、勝利よりも尊ぶべき何か。これは、信じるに値するか?

 と、いうふうなことをその時に考えていたわけではないのだが環状線へ出、青森市街地を眺める。

 八甲田大橋の下を周ってスシローへ。善蔵さんに多く語らせてその隙に自分はひたすら寿司を食う。我ながら卑怯者だと思う。財布に800円残ってたので7皿食べた。自分は善蔵さんが笑っていてくれたらそれがいちばんうれしい。

 22時過ぎ浪館通りのローソンまで送ってもらって帰宅。楽しかった。

PINK

 

 金曜日。寒い。

 iPhoneのリマインダー機能で10時から美容院を予約していたことを思い出す。

 家の近くの美容院。髪を切って染めてもらった。土岐麻子の『PINK』が浮かぶ。会計の時にクレジットカードが使えないことを知る。かばんとiPhoneを置いて同じ通りにあるローソンまで走ってお金を下ろす。今年で25歳になるというのにおかっぱ頭になった。まー、とりあえずいったん消滅したい。そもそも、美容師に「こうしてください」と注文しなければならないのが嫌すぎる。

 昼過ぎ帰宅。iPhoneの明かりを頼りに弟の耳の穴の中を見るなどして退屈だった。東大ポポロ事件。

片頭痛

 

 木曜日。片頭痛

 昼になるとテレビで「顔にはオリーブオイルしか塗ったことがない」と宇野千代さんが書いてます!というような宣伝文句のコマーシャルをやってるのだが、あれを見るたびによくわからない気持ちにさせられる。

 冷蔵庫にれんこん、にんじん、大根が余ってたのでねぎやら豚肉やら油揚げやらを合わせて昼飯は味噌煮込みうどんにした。母とふたりで昼のつまらないテレビを見ながら啜る。

 『心はどこへ消えた? / 東畑開人』文藝春秋読み始める。

 夜、ブルドーザーが来た。今年最初の除排雪。わが家の周りは住宅が密集しており雪を捨てる場所がないのでとりあえず家の敷地内に積み上げている。今年は大雪のために除排雪が追いつかず、積み上げた雪は高さ約2メートル、横約4メートル(通称古墳)になった。ブルドーザーが来れば外に出て雪の山を崩し、道路に雪を投げ捨て持って行ってもらう。両親と3人で約2時間かけて古墳を処理する。月は西に大きく傾いた。LEDの街灯に照らされる雪は強い風に吹かれていた。疲れた。

星の時

 

 水曜日。暴風雪警報。

 『星の時 / クラリッセ・リスペクトル 福嶋伸洋=訳』河出書房新社 読み終えた。これからも読み返すようにしたい。とても印象に残る文章だった。

死とは、自分と出会うことだ。横たわって死んでいる彼女は、死んだ馬みたいに大きかった。いちばんいいのは、やはりこうだろう—死なないこと。なぜなら死ぬだけではじゅうぶんじゃないから。多くを必要としているぼくを、死は満たしはしない。

 

 ふと思った。弟の名前が「すたみな太郎」じゃなくてよかった。

誕生日、命日

 

 火曜日。父方の祖父の誕生日であり命日。祖父が死んだのは2013年。祖父との思い出はあまりない。いつもサントリーのレッドを飲んでいて赤ラークを吸っていた。喋っているところをほとんど見たことがないが、小学生の頃、消しカスを床に落としたらものすごく怒られたことは覚えている。その後祖父は足が不自由になり車椅子で生活するようになった。間もなくして認知症になった。台所で固形のカレールーを口に入れ咽せていた。最後は施設に通うようになった。一度だけ、窓の外を指差して何かを言おうとしていた姿を見たことがある。たぶんどこか遠くへ行きたかったのか、どこか遠くへ行ったときのことを思い出していたのだと思う。初めて人の死顔というのを見た。祖父は明らかに死んでいた。それは生きている状態と比較することでしか知り得ない感覚だった。鼻や口に綿が詰められていた。いびきをかいて寝ている顔にも似ていたが安らかな顔、というのが自分にはわからなかった。父が自分にくれた名前には安らかの安の字が入る。火葬の前には祖父の顔を見ずに棺に花を置いた。母が「怖かったら見なくてもいいよ」と言った。祖父を焼いた炎の音は今でも脳裏で鳴る。人間の骨も初めて見た。やたら長い箸で骨を拾った。こんなことをこれから先幾度も経験するのか、とその時は思わなかったけれど、今ならばあんなことはできれば二度としたくないと思う。ただひとつ言えることは、祖父が死んだとき、自分は悲しくはなかった。祖父の死より、人間の死というもっと巨大で抽象的でいつまでも焦点の合わないものを見ていた。つまり、他人の目には映らないほど極めて小さく、それでいて恐ろしく具体的で自分の目にはあまりにも見えすぎる本当の悲しみというものを自分は今後経験することになるのだろう。

 『星の時』続きを読む。

「死ぬときは自分のことが懐かしくなると思う。」

 午後、弟とスーパーふじわらへ。明日は天気が荒れる予報なので今日のうちに買い出しに行く。鶏もも肉が安かったので明日は唐揚げ。カレー粉を買ってみた。浪館通りのローソンに寄り、いちごのロールケーキを母に買って帰宅。

藪漕ぎ

 

 月曜日。成人の日。

 「長靴2人分もってって藪漕ぎする?」と連絡あり。10時過ぎ歩いて出る。衝きたくなるような青天。青森駅へ。10時39分発の奥羽本線秋田行に乗る。床が濡れて滑り、5秒間ほど舞を踊ってしまった。その後車掌さんが車両内を走って移動するのを見、どこで買った靴なのか気になる。浪岡で下車。Hさんに片手を上げて挨拶する。

 車で浪岡を案内してもらう。友達の家まで自転車で行く坂道。樽沢、野沢。凍った溜池。夕焼けがきれいな道。浪岡には果てがないので来た道を引き返し、花岡公園へ。キャンプ場もある。Hさんが幼稚園の頃の思い出など聞く。健康の森花岡プラザは温泉やジムなどの健康施設で賑わっている様子。Hさんから長靴を借り、まだ誰も歩いていない雪を漕いでいく。楽しい。キツネか何かの足跡が点々と続く。

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 公園の端まで300メートルくらい歩いて引き返す。疲れるのと笑いすぎるのとで息が上がる。少し休憩してから経つ。長靴の中に雪が入り濡れた足が不快なHさんは裸足でアクセルとブレーキを踏んでいた。

 浪岡といえば、のアップルヒルへ。隣接のスキー場は子供連れで賑わっていた。お土産コーナー見る。割り箸が刺さった角こんにゃくのおでんが鍋で煮えている。生姜味噌つきで100円。入口近くに積まれてあったおせんべいを買うHさん。

 浪岡といえば、のスーパー「いとく」を拝み、因縁の浪岡中学校(ソフトテニス部だった頃、決勝戦で何度当たっても勝てなかった)のそばに車を停める。膝上まで雪が積もった浪岡総合公園。長靴に履き替えて進む。左手には遊具が見え、開けた正面には浪岡野球場。スタンド席へ続く階段も雪で埋もれている。躊躇なく登っていくHさんの後に続く。雪に埋もれた球場は絶景だった。アルプススタンドのはしの方。Hさんにスコアボードの横に立ってもらって写真撮る。相当イカしている。Hさんが「こうやって自由を獲得していくんだな〜」と呟いていた。ひと通りはしゃぐ。

 スタンド席から飛び降りるHさん。ふたたび藪漕ぎ。木に雪玉を投げ当てながら車へ戻る。自分は「運動神経悪い芸人」みたいな投擲を披露して笑われた。空がやたら高く感じる。

 浪岡駅へ。りんご農家で軽トラを運転するHさんの友人と駅前ですれ違い、お互いにおー、という表情で手を上げて挨拶していたのがよかった。Hさんは長靴を置きにいったん家へ帰る。自分はあぴねすへ。小中高生の書道展をやっていたので見る。だいたい小学3年生くらいから筆をコントロールできるようになるのか。小学1年生の「げんき」の「ん」とか「たから」の「た」みたいな生き方をしたいと思った。備え付けのテレビでNHKで『スパイの妻』をやっていたが誰も気にしていなかった。

 Hさんが戻ってきてふたたび車に乗せてもらう。青森市役所浪岡庁舎のすぐ目の前にある竹美屋食堂へ。熱いお茶が熱い。自分は鍋焼きうどん、Hさんは肉炒め定食。どちらもおいしい。柔らかく煮てあるごぼうのうまさに感動する。鍋の半分をごぼうにしてほしいと思った。大根の漬物。

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 食べ終え眠くなる。中学生の頃お世話になったクラウチスポーツ。学校に靴を卸してるので潰れない靴屋。インフルエンザの予防接種をしている小児科。スコッチエッグでおなじみ肉のおがさわらなど。浪岡駅まで送ってもらい、駐車場で話す。テレビで全国高校サッカーの決勝戦青森山田が3点目を入れてHさんと無感情のままハイタッチする。

 16時過ぎ別れる。楽しかった。青森の空の色はなんかサイケ、とHさんが言っていた。

 電車。トンネルを出ると天気が一変したのか日が落ちたのか暗い。雨か何かが車両に強く打ち付ける音に下を向いていた乗客が一斉に顔を上げ、うち1人はマスクの下からサラダせんべいを頬張った。

 青森駅マツモトキヨシで「オールドブック」という名前のマニキュアを見つけ、よくわからないけど買っといた。

 帰宅。母に「おう、藪漕ぎの人」と言われた。

極楽湯

 

 日曜日。

 昨日「始まらない」と書いたが、始まらないことによってすでに始まっている物語がある。

 10時20分頃浪館通りのローソンでHさんと落ち合う。モンベルへ。入口に立っている熊はそんなにでかくなかった。ゼビオの熊のほうがでかい。帽子、フリースなど見る。駄々をこねてHさんを困らせる。自分は十徳ナイフが欲しかった。申し訳ない。

 万里園で昼食。海老ラーメン、五目ラーメン。とてもおいしい。窓の外はよく晴れていた。テレビではビートたけしのTVタックルをやってたが誰も見てなかった。

 ブックスモアへ。2階にあるソファいい感じ。『文藝』春号買う。特集は母の娘。宇佐見りんの『くるまの娘』、イ・ランの『母と娘たちの狂女の歴史』、平岡直子の『お母さん、ステルス戦闘機』など。

 極楽湯へ。初めて入った。なかなかの混雑っぷり。湯気が強烈で視界が悪い。「黙浴」の貼り紙がされたヒバの風呂がよかった。子供連れ、銭湯の玄人。1時間後にHさんと落ち合い、自販機で牛乳買って畳の休憩室で飲む。びっくり人間の安田さんが思い出される。フルーツ牛乳はしんどい。

 ニトリへ。ペンギンのぬいぐるみがあったので視線をやると制された。

 浪館通りのローソンまで送ってもらって別れる。楽しかった。

 帰宅。宮本さんから着信。「途中でやめる」の山下陽光さんと奥さんの蘭さん、きらみささんと代わってもらって皆さんとそれぞれ少しずつ話す。蘭さんからは福岡から新大久保へ引っ越してきたこと、きらみささんからは息子さんが宮本さんによく懐いていることなどを聞く。賑やかでよかった。宮本さんに代わってもらい少し話す。最後ブツっと切れた。

 夜、辛い麻婆豆腐を食べて下痢をしたら報告する旨を善蔵さんと約束した。